" A Smart Sake Smuggler" (Sake no Kagonuke) consists of three comical episodes. A smart peasant, Sahyo, smuggles a bottle of sake saying it as a bottle of piss, etc. Since the end of 16th century, peasants were exploited and discriminated by the Samurai Clans who lived right next to them. So a young hero, Sahyo's adventure-stories, specially ones making fun of bureaucrats' foolishness, were joyfully told among peasants.
むかしあったずよ。村境にゃ、番所があって、番所のお役人はいばっておったもんだ。「こらこら、酒はこっちからあっちに持っていくのは、御法度だちゅうこと知らんはずはあるまい、佐兵」 「お役人さま、背負ってきたのは、小便で、あっちの畑にまいてくる、肥やしでごぜぇます」 なるほど、佐兵が背負っているのは、新しい酒樽だったど。 「そんなはずはあるまい。そのような新しい酒樽に、小便たぁあるまい。さあ、ここにおろせ」て、むりやり降ろさせたど。 「さあ、ふたを取れ、柄杓をもって参れ、ほら、やっぱり酒だ」 「お役人さま、これぁ小便だに」て、佐兵が言っているうち、お役人は柄杓に汲み取って、飲んでしまったもんだから、たまらね。 「ぺっぺっ、何だこれぁ、小便じゃ。佐兵の野郎、お役人さまに小便飲ませる。とんでもない野郎だ」 「だから、さっきから小便だ、小便だていうてんのに、お役人さまが勝手に、酒だ酒だて飲んで、ごしゃぐ(怒る)んでは、おらだ、なじょしたらええもんだか、わかったもんでねぇべなっす」 くどくど佐兵がいうもんで、お役人はこれには参ってしまって、 「ああ、ええ、ええ。通れ通れ。以後、他人をだましたりしては、悪れぞ」て、いばっっど。また佐兵ぁ、 「だから...」 「まいった、まいった。佐兵にゃ、とてもかなわね」て、番所を通したど。 その次の日、また佐兵は酒樽背負ってきたど。お役人がいうたど。 「今日は何だ」 「今日は酒でござります」 したら、お役人の方から、 「また、佐兵に小便飲まさっじゃ、たまらね。通れ通れ」て、番所ば通したど。今日こそ本物の酒だったがら、酒造って悪いごとになってた御城下さ、その酒もって行って、すごだまもうけたんだど。 そういえば、こんなこともあったど。 米もお役米ていうて、他の村さ売ったりしては悪れのだったど。 佐兵が大きな籠背負って番所さやってきたもんだから、お役人は、 「これ、佐兵、背負った籠さ、何入れてきた」てとがめたど。 「お役人さま、籠さ米入れで持って来申したどごで.....」 「何、米は他領に持っていくことはならん。御法度だちゅうこと、知らねはずはあるまいな、佐兵」て、むりやりおろさせで、籠の中調べたんだど。したら、ちっちゃな握り飯が二つ入っていたなだど。 「なんだ、佐兵。米ではなくて握り飯だどれ、ほに」て、お役人がごしゃぐど、 「握り飯だて、米を炊いだものだから、米にちがいないべに、お役人さま」て、佐兵もまけていねがったど。 「まいった、まいった。通れ通れ」て、お役人も一本取らっで、佐兵を通したど。 したら、次の日に、また、佐兵ぁ大きな籠背負ってきたど。 「今日は籠さ何背負ってきた」て聞くど、佐兵は、 「お役人さま、今日は米背負ってきたどごだ」ていうげんど、昨日だまさっているもんで、お役人はまたかかわりになっど、佐兵からやっつけられるもんで、 「ああ、佐兵握り飯だべ。ええから通れ」て番所を通したげど。 もう一つ、こんなこともあったど。 旦那からもらった着物ば質屋さもっていって金借りだど。したら、質屋の小僧が佐兵ば冷やかして、質札さ、「着物、しらみ五升」て書いて、「佐兵の着物だら、しらみ五升もついているべ」ていうのだど。 佐兵は質を受けだすとき、どうしても「しらみ五升」返してもらわんなねて、ごねだもんだど。 と〜びんと。 |
むかしむかし、村境には番所があり、役人はたいへんいばっていました。「こらこら、酒をこちらからあちらに運ぶことは御法度とされていることを知らないわけではないだろう、佐兵」 「お役人さま、背負ってきたのは小便です。あちらにある畑にまいてくる肥料です」 なるほど、佐兵が背負っていたのは、真新しい酒樽でした。 「そんなはずはない。そんなに新しい酒樽に、小便ということはないだろう。酒にちがいない。さあ、ここにおろせ」と、むりやりおろさせました。 「さあ、ふたをとれ、柄杓をもってこいい、ほら、やっぱり酒ではないか」 「お役人さま、これは小便です」と、佐兵が言う間もなく、役人は柄杓に中身を汲みとって、飲んでしまったから、たまりません。 「ぺっぺっ、何だこりゃ、小便だ。佐兵の野郎、役人に小便をのませるとは。とんでもない野郎だ」 「だから、さっきから小便です、小便ですといっているのに、お役人さまが勝手に、酒だ酒だといって飲んで、怒られるんでは、私たちはどうしていいか、わからないじゃないですか」 くどくどと佐兵がいうので、これにはお役人もまいってしまい、 「ああ、よい、よい。通れ通れ。以後、人をだましたりしてはならないぞ」と、いばっていいました。また、佐兵は、 「だから...」 「まいった、まいった。佐兵にはとてもかなわない」と、番所を通してしまいました。 その次の日、また佐兵は酒樽を背負ってやってきました。役人は、 「今日は何だ」 「今日は酒です」 すると、役人の方から、 「また、佐兵の小便を飲まされたのでは、たまらない。通れ通れ」と、番所を通してくれました。今日こそ本物の酒だったので、酒の製造が禁止されていた御城下にその酒をもちこんでたんまりもうけました。 そういえは、こんなこともありました。 米もお役米といって、他の村に売ったりしてはいけませんでした。 佐兵が大きな籠を背負って番所にやってきたので、役人は、 「これ、佐兵、背負ってきた籠には何がはいっておる」ととがめました。 「お役人さま、籠には米を入れてもってきました...」 「何、米を他領にもっていくことはならん。御法度だということを知らぬはずもないだろう。佐兵」と、むりやりおろさせて、籠の中身を調べました。すると、小さなおにぎりが二つでてきました。 「なんだ、佐兵。米ではなくておにぎりではないか、まったく」 役人が怒って言うと、 「おにぎりは、米を炊いたものだから、米にちがいはないはずです、お役人さま」と、佐兵も負けずに言い返しました。 「まいった、まいった。通れ通れ」と、役人も一本取られて、佐兵を通したのです。 また、次の日、佐兵は大きな籠を背負って来ました。 「今日は籠の中に何を背負ってきたのか」と聞くと、佐兵は、 「お役人さま、今日は米を背負ってきました」といったのですが、昨日だまされているので、またかかわりになると、佐兵にやりこめられそうなので、 「ああ、佐兵おにぎりだな。よいから通れ」と番所を通してしまいました。 もう一つ、こんなこともありました。 旦那さんからもらった着物を質屋にもっていきお金を借りようとしました。すると、質屋の小僧が佐兵を冷やかして、質札に、「着物、しらみ五升」と書いて、「佐兵の着物には、しらみが五升もついている」といいました。 佐兵は質を受けだすとき、どうしても「しらみ五升」を返してもらわなければならないと、しつこく粘ったそうです。 終り。
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高畠町はむかし天領といって幕府の直轄地であった。米沢藩とのあいだには番所があって、米、酒、ローソクなどは勝手に通してはいけなかった。とんち者の左兵が番所の役人をうまくだます話は、いつも権力をかさに着ていばっている役人に対する、村人たちの気持ちを代弁していたのにちがいない。
江戸時代末期に幕府が米沢藩に屋代郷(現高畠町)をくれようとしたとき、屋代郷の人々が天領にとどまっていたいと、騒動を起こしたが、そんな屋代郷の人々の心が左兵というとんち者の話を生んだのではなかろうかとさえ、思えなくない。役人やぜいたくな者をとんちでやっつける話は当時の若者によくうけたようである。
この民話は「山形新聞」1996年7月28日日曜版に「ふるさと民話紀行、置賜地方18」(採話・解説: 武田正、挿絵: 打田早苗)として載ったものです。採話・解説者、挿絵画家、新聞発行社からこのインターネット・ホームページへの転載許可をもらっています。
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