In the domain of Yamagata is a yamadera (mountain temple) called Risshaku-ji. Built by the Great Abbot Jikaku, it is located in an especially quiet place. Being told that it is worth visiting, we set out to see it, by turning south from Obanazawa, 18 miles on foot.
It was before sunset. We reserved a room at the hotel and went up to the temple on the mountain. Rocks upon rocks make the mountain, pines and cypresses
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原典 | 現代語 |
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山形領に立石寺(りふしゃくじ)という山寺あり。慈覚大師の開基にして、殊に清閑の地なり。一見すべきよし人々のすすむるによりて、尾花沢よりとって返し、その間(あひ)七里ばかりなり。
日いまだ暮れず。麓の坊に宿かり置きて、山上の堂に登る。岩に巌を重ねて山とし、松柏年旧り、土石老いて苔滑らかに、岩上の院々扉を閉ぢて物の音きこえず。
岸をめぐりて岩を這いて仏閣を拝し、佳景寂莫として心澄みゆくのみ覚ゆ。
閑かさや岩にしみ入る蝉の声
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山形領に立石寺(りっしゃくじ)という山寺がある。慈覚大師が昔開いたもので、特に簡素で静かな土地にある。一見すべきであると人々にすすめられたので、尾花沢より南にとって返し、その距離は28キロばかりである。
日はいまだ暮れていない。麓の宿坊に宿を借りておいて、山上の堂に登る。岩に岩を重ねて山となし、松や桧などの木々が年経ており、土も石も古いもので苔が滑らかで、岩上の寺院の数々が扉を閉じていて物音一つ聞こえない。 岸をめぐって岩を這うようにして仏閣を拝んで、美しい景色を心静かに鑑賞でき、心が澄んでゆくのを感じた。
閑かさや岩にしみ入る蝉の声
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私は米沢生まれですが、なぜかこれまで立石寺に小学校の遠足でもいった記憶はなく、'96年12月に冬の立石寺に初めていってみました。予想をはるかに越える石段を登るので見学に苦労をしましたが、五大堂からの眺めは格別でした。
立石寺からJRの線路をくぐり二口峠の方面へ行く途中に山形市立の山寺芭蕉記念館(Tel: 0236-95-2221、Fax: 0236-95-2552)があり、ここでは山形県に足跡を残した芭蕉についていろいろと学べます。芭蕉がいかに誇張を交えながらドラマチックに奥の細道を書いたかの映画、蕪村が書いたといわれる奥の細道のびょうぶ絵、などが印象的でした。ここの庭から谷越しに立石寺の全景がよく見え、上の写真はこうして撮ったものです。
芭蕉は「土地の人にすすめられて山寺へ行くことにした」と書いているが、実際にはもともとその気でプランに入れていたものでしょう。ただし山寺は能因法師や西行などがすでに歌った歌枕ではなかったので、こうしてドラマチックに仕立てたことがうかがえます。
芭蕉は山寺を、真夏の7月13日(旧暦5月27日)に訪れている。この句ができる前に、芭蕉は
山寺や岩にしみ込む蝉の声などを推敲したといわれています。
寂しさや岩にしみ入る蝉の声
立石寺からの帰りは、国道13号線へ出た所の交差点(大野目)のすぐ南にある「そば屋惣右ェ門」(Honda Primo店の隣り)に寄り、名物の板そばをからい大根おろしと一緒に食べました。山形県では、各地においしいそば屋さん(「出羽の国 そば処」参照)があるのです。